トラブルを起こさないよう事前に知っておくと便利な法令・条例の数々、知らなかったでは済まされません。
ドローンを飛行させたい場合は、主に航空法と小型無人機等飛行禁止法に基づいたいろいろなルールを守らなければなりません。
航空法 第9章の規制対象となる無人航空機は、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(100g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」です。いわゆるドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等が該当します。
例えば、100g(以前は200g)を超える無人航空機はすべて事前登録しなければならないこと、操縦者も有資格者であり登録された者のみがドローンを操縦できること・・などです。
改正航空法の施行
令和3年第204回国会で成立した「航空法等の一部を改正する法律」の一部の規定の施行期日を令和4年12月5日(月)等と定める政令が、令和4年7月26日に閣議決定されました。
[1] 航空法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令の制定
登録講習機関の事前登録等の申請受付の開始日を令和4年9月5日、機体認証制度等の開始日を令和4年12月5日に定める。
[2] 航空法施行令の一部改正
登録検査機関、登録講習機関及び登録更新講習機関の登録の有効期間を3年、指定試験機関の指定の有効期間を5年とする。
※ これらの政令の公布に併せて、機体認証や操縦者技能証明等に係る基準・手続等について定めた省令を公布します。
施行のスケジュール
- 公布 :令和4年 7月29日(金)
- 事前登録等の申請受付開始:令和4年 9月 5日(月)
- 施行 :令和4年12月 5日(月)
今後、すべての飛行形態というわけではありませんが、原則として知っておかなければ後々トラブルの元になったり、最悪警察沙汰になったりする場合があります。
ちょっとした遊びで自分ではそのつもりがなくても、厳密な解釈によると違法行為となる場合がありますので、頭の片隅にでも入れておいてください。 これは、操縦技能認定講習団体の資料にも書かれていることです。
では、一体どのような法令違反が発生するのか・・・。
無人航空機に関係する主な国内法
- 航空法
- 小型無人機等飛行禁止法
- 道路交通法
- 電波法
- 民法
- 個人情報保護法
- 条例
- 産廃法
- 刑法
- 外為法
ざっと見ただけで、これだけの法令がかかわってくるんですね、 意外・・と思われた法令などもありますね。
では、それぞれについて簡単に説明してみます。
1 航空法
一般向けドローンの普及や社会的活用に伴い、従来の航空法はここ数年でたくさんの改正が行われました。
2 小型無人機等飛行禁止法
重要施設に周辺地域(重要施設及びその周辺概ね300メートル)の上空における「小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」で、第11条第1項に基づく警察官の命令に違反したものは、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
小型無人機の定義として、小型無人機無人飛行機(ラジコンなど)、無人滑空機・無人回転翼航空機(ドローンなど)、無人飛行船など、特定用機器(人が飛行する)気球、ハンググライダーやパラグライダー などを指す。
上記の二つの法令に関する詳細については、本サイトの別記事や専門サイトなどで詳しく紹介されていますのでこの場では割愛させていただきます。
3 道路交通法
ドローンの飛行経路内に道路が含まれていることに対して、道路交通法における具体的な制限等は今のところありませんが、道交法77条において、「道路において、一般交通に著しい影響を及ぼすような進行形態又は方法により道路を使用する行為をしようとする場合は、当該行為にかかる場所を管轄する警察署長の許可を得なければならない」とあります。
道路上空を飛行する場合には、墜落・衝突のリスクを考えなければならないということです。幹線道路や高速道路となるとなおさらですね。この場合の道路とは、車道・歩道を含めたものです。
離発着のために道路に一部を使用したり、操縦者が道路上に立っていたりする場合は、場合によっては交通妨害となり道路交通法に抵触しますが、交通の妨げにならない状況で単に上空から撮影を行う場合は、現行制度では「道路使用許可」を要しない・・となっています。今後はどのように変わっていくのかは今のところまだわかりません。
4 電波法
ドローンなど、電波を発する無線機器を使用するためには、その機器の使用周波数帯によっては総務大臣の免許(無線技士資格)が必要になる場合があります。
購入の際は、使用するドローンがどんな周波数帯を使っているのか、免許が不要かどうかを事前に確認することが大切です。
そしてもう一つ重要なことが、技適マーク(技術基準適合証明マーク)が付与されている無線機器しか使用することはできません。
このようなシールが貼付されていない機器は、海外から輸入されたドローンなどで たとえ同一機種であったとしても 国内での認可がない違法無線機器となりますので、電波法違反となってしまいますので要注意です。
違反者には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」(第110条第1号)が科せられる場合があります。
電波法違反は、思った以上にきついものです。
「技適マークって何だろう」 をご覧ください。
総務省 電波利用ホームページ「ドローンに用いられる無線設備について」でも、確認できます。
5 民法
ドローンを飛ばす場合は、その土地の所有権に関し注意を払う必要があります。
飛行ルートに個人の所有地がある場合は、他人の所有している空間を無断で使用したとして「住居侵入罪」に問われかねません。
土地の所有権は、その土地の上下に及ぶと、民法207条で定められているからです。
しかし、この高さに上限が明記されていないため判断が難しいのですが、 法律の解釈として300mが概ね所有権の上限と言われたりもしま、それも実際に明記されている訳ではありませんし150メートルを超えているので別の規定にも関わってきますね。
実際に有罪かどうかは状況によるわけで、空間に入っただけで 直ちに「住居侵入罪」 となることはありませんが、機体の高度や敷地の配置によっては故意に侵入したととられかねない場合が無いとも言えません。
ただ通過するだけで損害を与えていなくとも、人によっては損害賠償を請求されることもありえます。(クレーマーレベルですが・・)
要は、飛ばれている側がどのように受け止めるか次第となってきます。
無許可での敷地空間利用は、権利侵害行為が問われかねませんが上空を通過するだけなら損害や被害を与える心配はないように思えます。
操縦不能や墜落などによる被害が発生したりプライバシーを侵害することも考えられますので、予め許可を求めたり確認しておくことが大事です。
多くのドローン愛好家は、損害保険に加入しています。ドローン専用保険もありますが、すでに加入している従来の損害保険などがドローンに適用されるのかどうかを、事前に保険会社に確認しておくと安心でしょう。
6 個人情報保護法
撮影機器を搭載して飛行する場合は、その撮影データーの取り扱いに注意しなければなりません。
「撮影映像等のインターネット上での取り扱いに関するガイドライン」では、撮影映像の取り扱いに関する基本的な考え方や具体的に注意すべき点などが述べられています。
マンション付近で飛行させていた際、操縦者にはその気がなくてもプライバシーの侵害として警察に通報された事例もあります。
総務省ホームページにてその旨の詳細を確認することができます。
7 条例
現在の航空法では、空港周辺、人口密集地で飛行制限がありますが、今後は地方の観光地などでも地方自治体の判断で飛行が制限されることがあり、 地方分権の流れとして各自治体でも独自にルールを定めることができるようになってきました。
各市町村などが独自で制定しているもので、山間部、自然公園、海上、原野、河川、池などはそれぞれの管理者によって取り扱いが違います。
必ず電話などでドローンの飛行計画を告げたうえで確認や許可申請などが必要です。
問い合わせ先がわからないときは、詳しい場所を示して市役所などに問い合わせると教えていただけます。
ここ数年で、マナーの悪いドローン愛好家などによる無断飛行によって、ドローン禁止となった場所が結構多くなったように思います。
罰則規定についてはそれぞれの管理者規定によりますが、警察沙汰になることは覚悟しなければなりません。
8 産廃法
これは民法にも関連することで、墜落や操縦不能に陥った場合即座に破損機体を回収できればまだよいのですが、紛失や機体ロストによる回収不能の場合は廃棄物処理に関する規定に抵触してしまうのです。
ドローンの機体にはバッテリーや電子回路が組み込まれているため、捨てる際には廃棄物扱いになります。
そして一般廃棄物の区分ではなく産業廃棄物にあたりますので、適切な処理をしなければなりません。
ドローンは登録制になりましたので、破損機体から所有者を割り出すのは簡単です。というよりそのための登録制度なのです。
9 刑法
航空法、小型無人機等規制法、電波法などに違反した場合に科せられる罰則についは刑法が適用されます。
例として、
過失傷害罪
ドローンの飛行に関しては、多くの基本的運用ルール(遵守事項)が定められています。それらを怠り事故が発生した場合はその責任を問われることになります。
第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
失火罪
ドローンはご存知のとおりリポバッテリーを利用してますがこのリポバッテリーは衝撃に弱く落下や何かに衝突をするとその衝撃で引火する事があり、それによって発生した火災により建造物や器物などを焼いたときは失火罪により処罰される事があります。
第117条の2(業務上失火等)
第116条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。
往来危険罪
往来危険罪は、一般的には 線路や標識の破壊、置き石などで列車の運行に危険を生じさせる罪、または灯台や浮標の損壊などで船舶の航行に危険を生じさせる罪です。
ドローンを線路の近くへ飛ばして、誤って線路上に墜落したりして鉄道の運行に支障を与えた場合過失往来危険罪が成立する事があります。
またドローンを海の上で飛行中、灯台や浮標、航行標識等を破損させてしまい船舶の運行に支障を与えた場合も同様に過失往来危険罪が成立することがあります。
第129条(過失往来危険)
過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、30万円以下の罰金に処する。
その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
その他犯罪のために利用した場合は、
- 器物破壊罪
- 窃盗罪
- 業務執行妨害
などが成立します。
10 外為法
正式名称は「外国為替及び外国貿易法」と言う外国とのお金や物のやり取り(輸出入)に関する法律です。ドローンとどんな関係があるの? と不思議に感じると思います。
こんな事例があります、「ヤマハ発動機不正輸出事件」があります。輸出許可が必要な小型ヘリタイプの農薬散布用無人航空機が無許可で中国企業に輸出され逮捕者が出ました、 無人航空機、農薬散布用ヘリは軍事的に転用可能な危険性を持っているので、自由に輸出は出来ないからです。
輸出令別表第1の4項(1の2)の貨物等省令条文 3条一号の二 3条一号の三
には、「300km以上の運搬飛行が出来るものや20リットル以上の粒子や液体状を運べて噴霧の機能を持っている無人航空機」と言う記述があります。
しかしこの場合は、農薬散布機のみが問題で、一般的に空撮に使うドローンは全くの対象外に見えてしまいます。
しかし、実際に問題となる記述もあります。
「輸出令別表第1の13項(4)の貨物等省令条文 12条十号の二」
には、このように書かれています。
「無人航空機又はその部分品若しくは附属装置であって、次のイ又はロに該当するもの(娯楽又はスポーツの用に供する模型航空機を除く。)
イ 無人航空機であって、次のいずれかに該当するもの
(一) 自律飛行することができるもの
(二) テレビモニターによる遠隔操作等により、視認できる範囲を超えて人が飛行制御できる機能を有するもの ( ロは省略)
こうなると、空撮用のドローンもその対象に含まれてきます。(娯楽やスポーツ用の模型航空機は、トイドローンなどを指します。)
為替、輸入、貨物等なんだかあまり身近なものとし感じませんが、実際はドローンも”要輸出許可の貨物”として分類される訳です。
海外旅行で、せっかくだから素晴らしい景色を空撮してみたい・・というような場合は要注意ですね。
よくわからないことは旅行業者か、経産省に問い合わせるほうが無難です。
以上、意外・・と思われた法令などもありますよね。
あまり細かい事ばかりを言い出すときりがないのですが、現在では危険行為に対して警察官による口頭注意や撤去命令なども可能となっています。
また、最悪・緊急の場合は無人航空機の破壊の権限も与えられることになりましたので絶対にごね得にはなりませんのでご注意ください。
何か面倒なことになってきたなぁ・・と思いつつ、ちょっとした趣味の場合どうしたらいい? そんな素朴な疑問もあると思います。
具体例
・100g未満のドローンで子供と一緒に遊びたい。
航空法や小型無人機等飛行禁止法には適用されず比較的自由に楽しむことはできますが、電波法(技適マークの有無)や他人への迷惑行為・プライバシーの侵害などは関わってきますので、万が一の事故などには十分注意を払う必要があります。
・100gを超えているが、自分の家や敷地内で飛ばすつもりだ。
自宅などの屋内で窓を閉め切って飛行させる場合は問題ありませんが、窓を開けた状態で飛行させてはいけないことになっています。屋外の場合は、フェンスなどで囲まれた場所で上空から外に出ることができない構造物(ネットなど)があれば問題ありません。ただし、使用周波数と技適マークの有無には注意してください、電波法はそのまま適用されます。
・100gを超えたドローンだが、だれもいない野原や山間部で飛ばしてみたい。
DID地区(人口密集地区)外、150メートル以下でも他者の所有地の場合は必ず関係機関に確認を取り、その指示に従う必要があります。当然、機体登録と操縦者登録は必要です。
・敷地内からはみ出さないように注意しながら、屋根や壁の点検撮影をしたい。
基本的な飛行ルールを守ることが最優先となります、また近隣住民への確認理解を得ることも大切です。 飛行のための基本的なルール をしっかりと覚えましょう。
ラジコン愛好家は結構大変。
従来は、特定の私設団体(ラジコンクラブ)などで、比較的自由にラジコン飛行機やヘリコプターなどを飛ばしていましたが、これらも同様に扱われます。
操縦者登録と機体の登録は必須となりました。
この場合いろいろ厄介なのは、ドローンなど既成の認可品を使用する場合は許可登録も比較的容易なのですが、自作機の多いラジコン機に関しては揃えなければならない書類が多くその安全性を客観的に証明できる必要があります。
設計図面や回路図や機能の証明、場合によってはその動作状況を示すための動画又は写真を添付することが必要となってきます。
今年に入って特にその申請が殺到しているようで、申請書の追加・訂正に頭を悩ませている方は多くいるようです。
いずれにしても、無人航空機の安全な運航を確保するためには必要であるため今後さらに細かく規制が分類されることも予想されます。
ただのおもちゃではなくなってきましたね、しっかりと勉強することが大切です。
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