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ドローン操縦ライセンス(免許)制度の学科と実地試験内容を確認しよう。

ドローン操縦ライセンス(免許)制度の学科と実地試験内容を確認しよう。

新制度施行の12月5日が目前に迫ってきました。さあ、これからどのように対応したらよいかは、人それぞれで違うと思いますが、まずは基本的なところを抑えておきます。最新版「無人航空機の飛行の安全に関する教則」をしっかり見直しましょう。 

 

ドローン操縦ライセンス(免許)制度が実施される12月5日まであとわずか。

これまで7月25日に国土交通省から「『航空法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係告示及び通達の制定について』に対する意見の募集について」というパブリック・コメントが公開になり、新制度が12月5日施行となること、操縦ライセンス制度に関する学科授業の教則、実地試験の内容について資料などが公開になっています。

そこで、パブリック・コメントにて公開された案をもとに構成されたものを見てみます。最終的に、運用状況によって部分変更になる可能性もあることとしてご覧ください。

 

ドローン操縦ライセンス(免許)の取得方法は以下の2つ。

ドローン操縦ライセンス(正式名称は「無人航空機操縦士」)を取得するには、

1.操縦ライセンス制度の「登録講習機関」となった民間ドローンスクールにて講習を受講後、「指定試験機関(全国で1法人、その他詳細未公表)」が実施する身体検査と学科試験に合格する(実地試験は免除)

2.「指定試験機関」における直接試験にて、身体検査と学科試験、実地試験に合格する

の2つの方法があります。(合格後、国にライセンス交付申請をして受理後にライセンス交付)

 

注目すべきは、登録講習機関(現在1,400校程度存在する民間ドローンスクールのうち、要件を満たすスクールが登録可能)の講習を受け合格している(技能証取得者)人は、指定試験機関における実地試験が免除されることです。

自動車の教習所の仕組みと似ています。

 

すでに民間ライセンスを取得している人等の経験者は受講時間短縮の措置もある。

民間ライセンスをすでに取得している「経験者」が登録講習機関で講習を受講する場合、最低受講時間が半分〜1/5程度(内容による)に省略されるという措置も発表になりました。操縦ライセンスの学科内容が航空局HPに掲載された講習団体が提供する講習の内容と重複する部分が多いため、合理的かつ民間ライセンスを持つ人にはありがたい措置であると言えます。

ここで、「経験者」の定義は各登録講習機関に委ねられているため、受講者の自己申告で「経験者」となることも可能ですが、終了審査(学科・実地試験)に合格するには一定以上の知識・技能が必要になります。

従って、ご自身で「経験者」か否かを判断する際には民間ライセンスの取得者のレベルや民間ドローンスクールのカリキュラムと比較・参考にしていただくのがよいと思います。

 

 

ちなみに。二等無人航空機操縦士資格(基本)を取得する場合のの「初学者」と「経験者」の最低講習時間の差は、以下のようになります。

初学者:学科講習10時間以上+実地講習10時間以上=20時間以上

経験者:学科講習4時間以上+実地講習2時間=合計6時間以上

※目視外、夜間といった「限定変更」をする場合は別途最低受講時間が必要ですが、同じように「経験者」は少ない最低受講時間設定となっています。

 

教則本の学科内容

現在、教則案も公開となりました。(80ページほどあります。)

教則とは ” 講習テキストのベースとなるもの ” で、「航空局ホームページに掲載されている講習団体を管理する団体」(2022年8月現在87団体)などの教則とほとんど同じ内容となっています。

内容については、今後部分的に変更されることもありますので、確認しておくとよいでしょう。

 

二等資格は民間ライセンス+α、一等資格は二等資格+α

設定された学科試験科目案を見てみると、民間ライセンス取得者の人には見慣れた内容化とかと思います。

教則の内容を確認すると、二等資格の内容は 「民間ライセンス取得時に学んだこと+α」ぐらいでしょうか。

また、一等資格の学科試験科目案は二等資格の内容プラス、「無人航空機の飛行性能」「飛行性能の基本的な計算」「カテゴリーⅢにおけるリスク評価」を加えたものになっています。

“カテゴリーⅢ” とは、一等資格と第一種機体認証を取得した機体を用いた場合にのみ許される、航空法にて規制された「飛行空域」や「飛行の方法」を第三者の上空で行う(都市部等第三者上空で行う補助者なしの目視外飛行:レベル4飛行を含む)飛行のことです。

 

これまで曖昧だった定義も明記され最新の法制度を網羅。

教則の内容は最新の法制度を網羅、2015年12月10日の改正航空法施行以後、新たなルールの追加や規制の緩和など(「機体登録制度」や「十分な強度を有する紐等で係留した場合の例外」等)、ブラッシュアップされてきた法律に対応しています。

また、カテゴリーⅢ飛行を取り扱う以上当然ですが、「第三者の定義」についても詳細に明記されています。

特に「無人航空機の飛行に間接的に関与している者」が追記されたことで「第三者」の定義がわかりやすくなっています。

無人航空機の飛行に間接的に関与している者  

間接的に関与している者(以下「間接関与者」という。)とは、飛行目的について無人航空機を飛行させる者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者とする。  

a. 無人航空機を飛行させる者が、間接関与者について無人航空機の飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している。

b. 間接関与者が、無人航空機を飛行させる者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている。なお、間接関与者は当該指示と安全上の注意に従うことが期待され、無人航空機を飛行させる者は、指示と安全上の注意が適切に理解されていることを確認する必要がある。

c. 間接関与者が、無人航空機の飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる。

※「(2)規制対象となる飛行の空域及び方法(特定飛行)の補足事項等 」より抜粋。

 

航空機のルールも考慮されている。

 

重大な事故につながりかねない航空機との事故を避けるために、航空機の運用ルールの抜粋が教則の中に入りました。

航空機との事故は人命に直接関わる重大なものであり、機体の大きさの関係から航空機側から無人航空機の視認が難しいなど、無人航空機操縦者がどのようなルールで航空機が運用されているのか理解しておく必要があります。

専門的な分野だけに、一般の無人航空機の操縦者はあまり理解していないのが現状かもしれませんが、今回教則に航空機のルールについての項目が入ったことで、今後の空域の積極的かつ広範な活用を考えた上で欠かせないことだと思います。

 

実地試験実施細則による、試験の内容

「回転翼航空機(マルチローター)」、「固定翼航空機」の項目も設定され実地試験の内容案も公開になりました。

“マルチローター” とは、いわゆるマルチコプターのことです。

 

実地試験構成は 、机上+口述+実技+口述

実地試験は下記の5つの項目で実施されます。100点の持ち点からの減点方式となり、二等資格は70点以上、一等資格は80点以上の持ち点を確保した受験者が合格となります。また、先述のとおり、登録講習機関での受講を済ませた方は指定試験機関での実地試験は免除となります。

(実地試験項目)

  • 机上試験:飛行計画の作成
  • 口述試験:飛行前点検
  • 実技試験(一等や二等、夜間・目視外などの限定変更により内容が異なる)
  • 口述試験:飛行後の点検及び記録
  • 口述試験:事故、重大インシデントの報告及びその対応)
  •  

実技試験は 基本+応用+緊急避難

実技試験内容は、基本(昼間の目視内)・昼間飛行の限定変更・目視内飛行の限定変更・最大離陸重量25kg未満の限定変更によって異なります。

上級資格の場合、「基本」をベースに、夜間環境で実技試験、目視外環境で実技試験・・などの項目が追加されています。

では、その実技試験がどのような内容か、二等無人航空機操縦士の内容を例に見ると・・

・基本的な「スクエア飛行(GNSS / ビジョンセンサーON)」

・応用的な「8の字飛行(GNSS / ビジョンセンサーON)」

・トラブル時を想定した「異常事態における飛行(GNSS / ビジョンセンサーOFF)」

の3つとなっています。

昼間、目視内の限定変更をする場合は、同じレイアウトを夜間環境・目視外環境で飛行することになります。ちなみに、夜間環境は「150ルクス以下の照度」と指定があり、一般的には “街灯下” が50〜100ルクス、”夜のアーケード” が150〜200ルクスと言われていますので完全な真っ暗ではありません。

また、一等資格の試験はレイアウトにそれほど変更はないのですが、基本的にGNSS / ビジョンセンサーはOFF、加えて高度変化を求められます(移動しながら1.5m→3.5mなど)ので、より難易度が高くなっています。

 

二等無人航空機操縦士の飛行経路

スクエア飛行

GNSS / ビジョンセンサーONの状態で3.5m上昇し5秒間ホバリング→機体の機種を常に進行方向に向けて試験員が口述で支持する飛行経路及び手順で直線上に飛行する。

 

8の字飛行

GNSS / ビジョンセンサーONの状態で1.5m上昇し5秒間ホバリング→機体の機首を進行方向に向けた状態で8の字飛行を連続して二周行う。

 

異常事態における飛行

GNSS / ビジョンセンサーOFFの状態で3.5mまで上昇し5秒間ホバリング→試験員が口述で指示する飛行経路及び手順で直線上に飛行(機首は進行方向)⇒試験員から緊急着陸を指示され次第、最短の飛行経路で指定された緊急着陸地点に着陸。

 

基本に忠実で正確な操縦技術が必要

実技試験の内容を見るとコース幅は3mあります(「最大離陸重量25kg未満の限定変更」を除く)。

特に二等資格に関してはGNSS/ ビジョンセンサーON(「異常事態における飛行」を除く)なので、現行のドローンスクールを卒業した方ならば問題ないレベルです。

目標物を設定することなく大空を気持ちよくビュンビュン飛ばしていた方にとっては決められたルートをゆっくりと飛行させるということは慣れない飛行かもしれません、実技試験を受験される際には「ゆっくり」「まっすぐ」「一定のスピード」の3点を意識して規定コース内を飛行すれば大丈夫でしょう。

また、一等資格の実技試験は基本GNSS / ビジョンセンサーOFFで、飛行高度を変化させる内容となっていますので、さらに正確な操縦技術が要求されます。

機体の流れる方向を瞬時に察知して、常に微調整しながらまっすぐ飛ばすことができる技術は必要ですね。距離感覚も重要な要素です。

日本国内におけるドローン利活用の拡大の波は目前です。

もちろん、ドローン操縦ライセンス「無人航空機操縦士」資格がないと全くドローンを飛ばせないわけではありませんが、野外で空撮を楽しみたいと考えている人にとって100g未満という制限はかなりつらいものです。

ぜひみなさん頑張って操縦資格を取得しましょう。

 

 

国土交通省 よくある質問

無人航空機操縦士試験案内サイト

無人航空機の飛行の安全に関する教則 (一等学科試験)
(令和4年 11 月 2 日・令和4年9月5日初版・令和4年 11 月2日第2版)
無人航空機の飛行の安全に関する教則 (二等学科試験)
(令和4年 11 月 2 日・令和4年9月5日初版・令和4年 11 月2日第2版)

教則本をもう一度見直して、一発合格を目指しましょう。

 
操縦ライセンス制度 学科試験(二等)サンプル問題

参考資料

パブリックコメント「『航空法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係告示及び通達の制定について』に対する意見の募集について

レベル4の実現に向けた新たな制度整備等(小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)

 

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