技適番号のない旧JARL登録機種や自作機などで開局手続をする場合、無線設備の保証が必要となりますが書類関係を揃えるか又は作成するのが面倒ですね。懐かしい真空管の話!久々にアマ無線の世界を見てみたい。
真空管アンプとは
真空管を増幅素子としたオーディオアンプを「真空管アンプ」と呼んでいます。
普通売られているコンポなどのアンプは現在はほとんどが半導体素子(トランジスタやLSI)を使用しており、「真空管アンプ」に対して「半導体アンプ」と呼ばれています。
一般的には、真空管はおよそ5,000時間使い続けることができるといわれています。ほんのりと光る真空管がノスタルジックかつ何とも言えないレトロ感を醸し出し、インテリアとしても人気が出てきたと聞いたことがあります。
「真空管アンプ」は「半導体アンプ」とどこが違うのでしょうか。
真空管はその出力側を接続して直接スピーカーを駆動する事が出来ないので、出力トランス(アウトプットトランス)を通してスピーカーに接続します。
出力トランスは鉄の塊みたいなもので重く、それが左用と右用の2個ついています。
そのほかに電源トランス(整流回路)もあるので真空管アンプはどうしても大きく重たくなりがちです。
小型の真空管アンプでも重さは5kgほどあり、外観は小形でもそれなりにずっしりした重さを感じますし場所もそれなりに占有します。当然消費電力も半導体に比べると大きくなりますね。
それに対して半導体アンプは小さなトランジスターで直接スピーカーを駆動できますので小型で軽量化ができ、消費電力も少なくなります。
性能面では最大出力、周波数特性、ひずみ率、消費電力など真空管アンプより半導体アンプの方が数値的には優れているものが多いですが、それでも真空管アンプに人気があるのは、やはりそこから出てくる音が、まろやかで聴き疲れしない音を出してくれるからという意見が多いものです。
真空管を使用する回路についてもいろいろあり、代表的なものとしては次のようなものでしょうか。
1) 出力を真空管1本で行うシングル回路
2) 出力を真空管2本で行うプッシュプル回路
3) 3極管回路
4) 5極管回路
などがあります。(電源回路は別として)
3極管回路は音質はいいのですが出力(W)が大きく取れません。
5極管回路は3極管と逆に大きな出力(W)は取れますが音質は3極管ほどではありません。
真空管もトランジスタも電流をコントロールするデバイスです。
その大きな違いは電圧と電流の関係です。
真空管はトランジスタと比較して、内部抵抗が高く高い電圧でありながら低い電流値で動作をします。
電流が少ないことで、電気回路での電圧降下は少なくなり電流が流れる部品の抵抗値を考慮する必要がなくなります。
現在の半導体素子は、FET(電界効果トランジスタ)が使われており、内部抵抗が高く昔のNP接合型トランジスタに比べると電流値はかなり低くなっています。
真空管にも様々な種類がありますが、ここでは基本となる「三極管」に説明していきます。
下図が「三極管」を輪切りにした断面構造です。
一番外側のガラス管の内側がすべて真空になっていて、それ故に「真空管」と呼ばれているわけです。
構造としては、一番中心にあるのが「ヒーター(熱電対)」で、それを「カソード(陰極)」という筒状の金属が囲んでいます。
その周りを「グリッド(制御格子)」という網状のシート電極が覆い、最後に「プレート(陽極)」という板状の金属が囲っている構造になります。
ヒーターによって温められたカソードから熱電子が放出され、グリッドを通過しプレートへと流れていきます。
たいていの真空管において、ガラス管の中に見えているのは、ほとんどが「プレート」です。通常、「プレート」以外の部品はあまりよく見えず、内部にヒーターの灯りがほんのり見える・・という具合です。
この中で直接増幅に関わる電極が「プレート」、「グリッド」「カソード」の3つで、「三極管」という名称はそこからきているわけです。
シンボルマークとしては、上図で示したものが三極管を表す記号として使われています。
「コントロールグリッド」は、トランジスタでいうところの、B:ベース に相当し、ここを通過する電子の流れをコントロールします。
四極管は、グリッドが2つあります。グリッド(制御格子)はつまり「コントロールグリッド:CG」のことで、その外側にもう一つのグリッドが配置されており、これを「スクリーングリッド:SG」といいます。
五極管は、スクリーングリッドの外側に、更に「サプレッサグリッド:SuG」が配置されています。
この3つのグリッドで、電子の流れを微妙にコントロールするわけです。これらをまとめて、多極管と言います。
出力(マッチング)トランスの役目
トランスは真空管アンプを制作するうえで重要な部品のひとつです。
厳密にはマッチングトランスというもので、真空管アンプには、出力トランス(アウトプットトランス・マッチングトランス)が欠かせないのです。
出力トランスは、真空管アンプ回路の内部抵抗値とスピーカーのインピーダンスがミスマッチを起こすと信号波形やレベルが歪んだり減衰したりするため、抵抗値を合わせるために使います。ゆえにマッチングトランスという訳です。
真空管アンプはなぜ音がいい?
真空管で作られた回路は「奇数次高調波歪み」を打ち消し「偶数次高調波歪み」を強調するように働きます。
「偶数次高調波歪み」はもともと楽器の音にも含まれる「倍音」の成分なので豊かな音に感じられるのでしょう。
真空管アンプは、最大出力を越えても回路によっては急に音が歪んだりしません。トランジスタでは急に歪んでしまいクリップします。(増幅曲線を調べてみると、一目瞭然です。)
歪まないことに越したことはないですが、ゆるく歪むのでふいに大音量になっても音が崩れにくく耳障りがあまり悪くなりません。
オーディオ用には、現在でも真空管愛好家は結構いるようですが、私が40数年前に使用していたアマ無線機 (当時)TORIO(トリオ) TS520 というSSBのHFトランシーバーの終段増幅には真空管が使われていました。(これは高周波増幅用ですが)
当時はトランジスタと真空管を併用した機器が多く、半導体での大電力ドライブがまだまだ不十分だったころですね。
当時トリオのSSB機は松下のS2001という終段増幅用の真空管を使用していましたが、これは6146という送信管の廉価版でして差し替えでどちらもそのまま使えたと記憶しています。
TS520は、今も大切に保管しています。(現役ではありません、もう使用許可がおりないので・・・)
因みに、オーディオ用のプリメインアンプを制作した時は、増幅回路だけではなく、電源回路も2極管を整流回路に使っていました・・。
オーディオ用としての真空管
三極管といえば300Bというほど広く知られたもので、中国などで量産されるようになって価格的にも求め易くなり人気が高まりました。
音質的には中高域での繊細感と、中低域にかけて量質感のある音質が特徴です。
何とも真空管らしい音質といえるでしょう。出力はシングルで7~8W、P-P(ピークtoピーク)15W~20Wといったところです。
多極管の場合は、三極管よりも音質がしっかりしており、パワー感が特徴でしょう。
しかし、繊細さでは三極管にやや分があるようで、こればかりは好みの問題かもしれませんね。
三極管と多極管が音楽のジャンルでその好みや分類が分かれるといった意見は多くあるようですが、真空管そのものの持ち味に多様性がある証拠とも言えますね。
プリメインアンプって?
オーディオはアナログ信号(レコード盤)が主な入力ソースであり、カートリッジ(レコード針の振動)の極めて低い出力電圧(0.2mV~2mV程度)を正確に増幅する必要がありました。
更に、トーンコントロールやサブソニックフィルター、バランス調整などの機能を持たせたものが一般的で、それらの機能を総称して「プリアンプ」といいます。
そして、プリアンプの出力を更に増幅するのがパワーアンプであり、それらを一体化して使い易くしたものが所謂「プリ・メインアンプ」と言われるものです。
その後CD(デジタル信号)の時代となり、ソースの出力電圧自体が100倍近く(フルビットで2Vrms)まで高くなった結果、それまでのアナログソースオンリーの時代には必要不可欠であったプリアンプの必要性がなくなり、パワーアンプ直結でも電気的には十分な利得が得られるようになってきたのです。
このあたりの事情については、オーディオ用アンプの愛好家の方の方がより詳しいと思いますのでここでは割愛させていただきます。
オーディオの世界では真空管は根強い人気と需要を維持していますが、こと無線分野となると事情は違うようですね。
やはり技適の問題が大きいのでしょうか、懐かしさのあまりあれこれ検索してみましたが、真空管式無線機を扱っている方を見つけることはできませんでした。
無線機におけるレトロブームというのはないんでしょうか。寂しいもんです。
などと言いながら、私も最新のハンディタイプを使っています。
TS520Xもエモテーター(アンテナ回転用モーター)も3エレアンテナも、今は時々引っ張り出しては眺めてばかりです。