ドローンを合法的に飛ばそうとしたとき、よく言われる4アマ無線資格。そのため国試に挑戦しようとする方は大勢いますね。ここで、試験対策のための無線知識の一つ ”電離層” について解説してみたいと思います。
電離層(でんりそう)とは、
地球を取り巻く大気の上層部にある分子や原子が、太陽からの紫外線やエックス線などにより電離し、その密度の違いにより幾層にも重なっている領域です。この領域は電波を反射する性質を持ち、これによって直進する短波帯の電波が地上との間で反射を繰り返し遠距離通信が可能となる訳です。
電離層による電波の伝わり方(周波数による違い)
超長波(30kHzより低い周波数)
地表を這うように伝搬するため電離層の影響はあまり受けない。
長波(LF・ 30 – 300kHzの周波数の電波 )
地球の昼半球ではD層で反射して、D層が消滅する夜半球ではE層で反射される。
中波(MF・ 300kHz – 3MHzの周波数の電波 )
地球の昼半球ではD層で減衰されてしまうため、昼半球では地表波が届く数十キロ程度に留まる。
D層が消滅する夜半球での送受信では主にE層で反射されるため、数百から1000キロ以上の遠方までの伝搬が可能となる。
短波(HF・ 3 – 30MHzの周波数の電波 )
常にD層を突き抜けF層で反射される。昼半球と夜半球では電離層の状態が変わるため伝搬距離が異なってくる。(昼半球では高い周波数が、夜半球では低い周波数が反射されるようになる)。
VHF・UHF・SHF( 30MHzの周波数の電波 )以上
この周波数帯になると、電離層を通り抜けてしまうので反射伝搬を利用することはできない。
VHF ( 30MHzから300MHzの周波数の電波 ) : Very High Frequency
UHF ( 300MHzから3GHzの周波数の電波 ): Ultra High Frequency
SHF( 3GHzから30GHzの周波数の電波 ) :Super High Frequency
地上通信として使用する場合は、見通し距離内に中継所を設置する必要がある)。逆に、電離層を突き抜ける性質を使い、人工衛星や電波天文学など宇宙通信に利用される。
スポラディックE層
春から夏ごろにかけて、主に昼間に上空約100km(E層付近)に局地的に突発的(スポラディック)に発生する特殊な電離層である。
Eスポの電子密度が極度に高い場合は、F層でも反射できないVHF帯の電波をも反射するという特殊な性質がある。
Eスポが発生すると、普段は受信できない遠距離のVHF放送やVHF通信が突如として強力に受信されることがある。
日本の部分地域から全域、日本の周辺諸国や離島・地方のテレビやFMラジオの電波がEスポで反射して強く受信されたり、FMラジオ放送等に混信による音声の乱れが生じることがある。
例えば普段は受信できないFM国内放送が、フェーディング(受信電波の強弱変動)を伴いながら 突然聞こえ出し 比較的短時間で受信されなくなる。 初期のアナログ地上波のテレビ放送でもEスポ発生の影響で混信による画像や音声の乱れが生じることがあった。
21MHz帯、28MHz帯、50MHz帯の周波数の反射が顕著で、長距離(300 – 1500km程)の交信が可能となる。 Eスポ反射波受信による混信は、時として業務無線・放送関係者にとっては厄介だ。
一方、アマチュア無線家・BCL(ラジオ放送受信)愛好者にとってEスポは「楽しみな自然現象」であり、Eスポ発生と同時に一斉に海外への長距離通信を楽しんだものだ。 筆者も、出力10W機(SSBトランシーバー)で、マレーシア沖を航行中のタンカーと交信し、QSLカード(自局名の記念カード)の交換までしたことがある。
デリンジャー現象
太陽フレアが起きると、電離層の電子密度は通常よりも高くなり地上からの電波は電離層に反射されずに吸収されてしまうため、短波を用いた長距離通信に障害をもたらすことをデリンジャー現象と呼ぶ。
太陽フレアが発生すると太陽からのX線や紫外線が増加し、それらが電離層に到達することで電離層のD層の電子密度が増加する。
フェーディング(受信電波の強弱変動)
何らかの原因で、電波の受信レベルが波のように変動する現象。 細かい説明は割愛するが、原因によって区別されている。
干渉性フェージング ・ 偏波性フェージング ・ 跳躍性フェージング
吸収性フェージング ・ 選択性フェージング ・ K形フェージング
地震との関係
近年、電離層の異常と地震発生との関連性が指摘されている 。
地震による地殻変動などで発生する地電流によって生じる磁場で、地磁気の強弱が変動する。それまで地磁気によるローレンツ力で弾かれていた宇宙線が電離層へ到達し、その増減により電離度が変動する。観測者には、電離層の高度が変動するようにみえるという説がある。また、時に発光現象がみられることもあるらしい。